北アルプス全縦走(新穂高温泉~親不知)4日目

4日目行程

冷池山荘→布引山→鹿島槍ヶ岳→八峰キレット→キレット小屋→五龍岳→唐松岳→不帰キレット→鑓ヶ岳→白馬岳頂上宿舎
移動距離:約19km
行動時間:約10時間40分(4時10分~14時50分)
コースタイム:18時間25分
天気:晴れ曇り時々ガス。風強い。
短縮率:57.9%

この日はこの旅における核心部。気合を入れて臨んだからかトラブルが一番少なく進めた日という印象。
それでも短縮率は57.9%と全日程において3番目の短縮率。
しかしながら、キレットなどの難所でコースタイム短縮が難しいポイントがあったことを考えれば上出来だと思う。

GPSロガーバッテリー切れにより不帰キレット手前で途切れました。
35時間くらい持っていた計算。

出発(冷池山荘)


おはようございます。本日は2016年8月14日。この旅が始まって4日目となりました。
今朝は3時起き。
今日はこの旅における核心部、八峰キレット、不帰キレットを通過するため、少しでも早く起きることにしました。
少し風が強い?

暗闇の中、着々と準備。
狭いストックシェルターの中でも辺りに何があって、何をしなければいけないのか、はたまたその順番など、ちょっと慣れてきた感じがあります(^^)
ほぼ準備を終え、ここで迷います。コンタクトレンズを入れるかどうか。
テクニカルな場所を通過するなら眼鏡よりコンタクトの方が良い。けどもまだ辺りは暗く、持参した手鏡でコンタクトを入れられるか分かりません・・。
が、結局入れることに。
で、5秒後にはそれが無謀だったことに気付きます。
しかし、既にコンタクトレンズの容器は開封してしまった。入れるしかない。
10分くらい格闘した後、ようやく両目にコンタクトレンズを入れることに成功。
時刻は4時10分過ぎ、ようやく出発となりました。


4時45分。
今回始まって以来、初となるナイトトレイル。
頭にはブラックダイヤモンドのアイコンを装着。
つい先日、海外通販サイト「trekkin」で注文した品です。
明るさは320ルーメン。
んん・・確かに明るいかも。
道は特にテクニカルではなく、稜線の登り。
先に見える登り道にはポツリポツリと先を行くハイカーのライトが確認できます。
そしてある程度登ったところで空が薄っすらと明るくなってきました。

鹿島槍ヶ岳のご来光


4時53分。
1時間ほど登ってようやく頂上に着いたようです。
ご来光待ちのハイカーがちらほら。


5時00分。
ここは布引山?中途半端なところで朝日を迎えることになったが、まあ良いだろうと道標を確認すると「鹿島槍ヶ岳」。標高2849m。
なんだ、もう鹿島槍ヶ岳に着いていたんだ!
これは頂上をこのまま通過するのは勿体ないと、自分もご来光を待つことにしました。


5時1分。
ご来光を待つ人。


5時8分。
ざわざわし始める。そろそろか。


朝5時8分、ご来光となりました。


今日は核心部を早めに通過するために早起きしましたが、思わぬ百名山からのご来光となりました。
早起きは三文の得ですね(^^)

ご来光・・・素晴らしかった。
さて、鹿島槍ヶ岳の次はいよいよ八峰キレットへ。
鹿島槍ヶ岳の下りから見える景色はとても美しく神々しく感動的。
美しすぎる・・。
この先の八峰キレットで滑落してしまったら、こんな景色もう見れない。
感動と恐怖が入り混じった感情からか下り道で一人涙。
八峰キレット、不帰キレットを通過して、絶対に日本海に到達してやる!

八峰キレット

明かりはすっかり明るくなりました。
ふと視界に違和感を感じます。
左右で見え方が違う!?
どうやら朝、暗闇の中でコンタクトを入れた際、誤って左右逆に入れてしまったようです・・・。
こんな状態でキレット通過したくないな。。
小屋のトイレに手洗い場と鏡があれば良いけど。


下った先に道標がありました。
キレット小屋、五竜岳方面へと進みます。


地面には「キレット」の文字。
なんとなくおどろおどしい・・。
それまで手に持っていたストックはザックの中へ。
意を決してその先へ。
いつキレットが始まる??

最初にちょっとした岩場の岸壁みたいなところを通る。
ここは全然大したことなく普通に通過。
その後は特に危険個所は無し。
もしかして、さっきの岸壁が八峰キレット?だったら拍子抜けだな・・。


なんて思いながら進んでいると、ネットで見かけた風景。岸壁の先に両側を岩で挟まれ、梯子があるような箇所。
「ああ、ここ、、見たことある!」
しかし、ここはそれなりに緊張はしたものの特に難なく通過。

これで終わりか?
で、更に進むとついに核心部と思われるポイントが。
最初に通過した岸壁とは違い、鎖に捕まりながら狭い岸壁を進む箇所。
一歩一歩確実に通過。
下の方にはキレット小屋が見える。
やった・・・八峰キレットクリアした。。

キレット小屋


6時4分。
キレット小屋に到着。
まずは用を足す。
トイレのドアを開けると山荘の人と思われる男。
「こんにちは」と挨拶するも無視される。・・こいつ、目が死んどる。
感じ悪~なんやねんこいつ(笑)

トイレに鏡はなく、コンタクトレンズは入れ替えられず・・・。
受付側に行きポカリスエットを購入。500円。
受付の人は普通な感じでした。まあ、色んな人がいるんですね。

外のテーブルに着席。
ここで出発時に仕込んでおいたアルファ米を食べる。
すると一人の若い男性ハイカーが到着。
「速いですね~!」なんて言われてちょっと嬉しくなるも、速いが偉いわけじゃない、着実に行かなければと気を引き締め直す。
八峰キレットをクリアしたことで、不帰キレットもきっと通過できる、そんな気がしました。

五竜岳


次に目指すは百名山、五竜岳。


で、五竜岳、これがきつかった。
八峰キレット、不帰キレットにばかり気を取られて油断していました。
ここの最後の岩場の登りは急だし、もちろん両手使うようなポイントだしで苦戦しました。
○印を見逃すと、とんでもない場所に行ってしまうし。
G4、G5と言われるポイント、どっちだったか忘れましたが、そのどちらかは結構緊張したのを覚えています。


8時12分。
やっとの思いで頂上に到着。
上には数人のハイカーさん。
「頂上はあっちだよ!」と教えてくれる。
その指差した先には確かに頂上の証である棒が立っているのが見える。
「あそこまではビクトリーロードだね!」なんて言われてお互い笑う。


きた。五竜岳山頂!
標高は2814m。


あたりは断崖絶壁な感じ。
雲海が広がる。
ちょっと高すぎて怖い。


もうこんな辛い所には二度と来ないかな?なんて思いながら周りを見渡します(^^;)

唐松山荘


次に目指すのは唐松山荘。
不帰キレット前の最後の山荘です。
唐松山荘についたらしっかり休憩していこう。


その後も登りあり。


こんなマークも。


結構ここも危険だったなー!なんて思って登りきると「牛首の鎖場」という看板。
危険マークは付いていないものの難所でした。
八峰キレットから不帰キレットまではキレット以外も気の抜けない難所続きでした。
通過される方はしっかり体調を整えて通過するのが良いと思います。
しかし、決して無理なコースではなく、落ち着いて行けば大丈夫な「登山道」ですので。


10時19分。
唐松山荘に到着。
ここでは自動販売機でコカコーラを購入。400円。久しぶりの炭酸飲料、感動するかと思ったけど、そんなに感動しなかった。
そして、ここでトイレでコンタクトレンズを入れ替えることに成功!!(五竜山荘だったかも)
これで視界バッチリ!

不帰キレット 不帰2峰


10時46分。
唐松山荘を出てすぐに唐松岳山頂に到着。2696m。


先に進もうと下りにさしかかると、足元に「この先 不帰の瞼」の看板。
ついに来たか!


どんな難所が待っているのだろう。


11時8分。
と、進んでいると「不帰2峰 南峰」の看板。
あれ、なんか難所を一個通過した?
不帰キレットには1峰、2峰、3峰とピークごとに名前が付いているようです。
今回南側から進んでいるので3峰→2峰→1峰という風に通過するのですが、3峰は知らぬ間に通過していたようです。

不帰キレット 不帰1峰


案内板。
ここまで特に難所なし。
他のハイカーと会話する余裕も。


いつ難所が現れるのか、ざわざわします。
心なしか、向こう側からやってくるハイカーは風貌が猛者っぽい人たちばかり。
この辺りのちょっとしたピークで男性と会話。
「ここから先の下りが危険なくらいで、あとは大丈夫ですよ~」と。
よし、気合い入れていこう。


確かに言われた通り、下りは急で、両手両足を駆使して下る感じ。
ここで思ったのが、俺は下るのが下手だということ。
ここからは憶測ですが、鎖場、梯子の急な下りなどは、セオリーとしては後ろ向きになって下るものだと思います。
なぜなら後ろ向きだと下るときにザックが邪魔にならないから。

けども俺は前が見えていないと怖いので、進行方向にそのまま前向きで降りていきます。
そうすると急な下りではザックが背面の岩壁と擦れてしまうことがあり、ちょっと危険。
そして、もしこの体勢で滑落したら頭から落ちてしまう可能性もあり。
後ろ向きで下って行けば、滑落しても足から落ちるはずなので、岩壁などに手をつける可能性がある。
とか思っているうちに、なんとか下り区間終わり。
この下り区間は苦戦したけど、視覚的に怖いって感じではなかったです。
今回はザックが30Lだから良かったものの、50、60Lとかだとまた話は別なのでしょうね。

その先は怖かった。八峰キレットの岩壁みないな箇所。
あと一か所、足元の岩と岩の隙間から空が見えるみたいなポイント(笑)
マジか、って思いました。ゆっくり、慎重に通過。
その先で足元の岩に×印が沢山つけられているポイント。
こっちは違うんだな。こっちか。と進む。
その先にあるのは鎖もない断崖絶壁の岩壁を回りながら進むような道。
「いや、これはアカンやろ・・・・・!」
流石に行くのを躊躇い、辺りを確認。
するとその断崖絶壁はミスコースだということが判明。
そりゃそうだよな、良かった、と一安心。
しかし、頭が前に向かっていて冷静さを欠いていたら、そのまま突き進んでいたかもしれません。
「冷静に、冷静に」自分に言い聞かせます。


通過してきた難所を振り返る。
難所では撮影する余裕はなく(^^;)


11時44分。
「ここは不帰一峰の頭」
最後のピークに到達しました。
そこから先も難所の下り。
これを下って不帰キレット、、無事通過!!!!
ちなみに、不帰キレットは南側から通過する方が下りが多くなり難易度が上がるようです(唐松から白馬方面に進む方が難易度高い)。

天狗の大下り・・を登る


不帰キレットを通過してすぐに若いグループに遭遇。
不帰キレットのことやこの先の天狗の大下りのことなど会話する。
「天狗の大下りは気が滅入るくらい登りますよ~」と。
(・・・大丈夫、体力勝負なら得意、特に登りなら!)


12時24分。
天狗の大下りは流石に長く、疲れたな・・ってころにまだ上が見える(^^;)
うーーん。。
が、なんとか登りきったようです。


稜線を進み・・。


12時45分。
天狗の頭に到着。

天狗山荘


12時59分。
下って天狗山荘。
朝から百名山の鹿島槍ヶ岳に五竜岳、そして八峰キレット、不帰キレットと盛り沢山でした(^^;)
けれども全て無事通過。
これで日本海に辿り着ける可能性がぐっと高くなりました。


ここではごはんセットを注文。500円くらい。
そういえば、昨日から「台風」の言葉を耳にするようになりました。
明日は荒れる可能性があるとか。
天狗山荘の人に天気を聞くも、山の天気は分からないからね~という回答。そうだよなあ。
確かに今日は昨日まではなかった冷たい風が吹いています。

今日の予定はこの先の白馬頂上宿舎。時間、体力次第ではこの天狗山荘も考えていました。
が、まだ時間も体力も残っていたし、荒れる前に少しでも進めておきたいという考えから、予定通り頂上宿舎まで行くことに。
場合によっては、さらに先の朝日小屋もありか!?

白馬エリアへ


13時44分。
天狗山荘を出てすぐに登ったのが「白馬鑓ヶ岳」。標高2903m。
ついに白馬の文字が!
思えば去年は同じ時期、東側の麓を走る「塩の道トレイル」で日本海を目指しました。
あの時は下から見える北アルプスの山並みを眺めて、あの中を走っている仲間もいるんだろうなーなんて人ごとのように思っていましたが、まさか翌年自分が走るとは思ってもみませんでした(^^;)
むしろ1週間前はみちのく潮風トレイルを走る予定でしたし。。


14時7分。
ちょっとガスッてきました。


14時22分。
朝からの冷たい風もあってか今日はそんなに汗をかいていません。
やばいな、ちょっと体を冷やしてしまったか。
それまで半袖短パンでしたが、この辺りで上にトレントフライヤージャケットを羽織りました。

白馬頂上宿舎に到着

天狗山荘からは視界こそ悪かったものの難所はなく、順調に進めることが出来ました。
そして白馬頂上宿舎に到着。
早速、テント場で場所確保。
しかし、風が強い・・・!
とりあえず場所を確保してテント受付へ。
ここの受付の若めの髭の男が物凄い感じ悪かった!!!(笑)
まず、扉を開けると「そっちの扉じゃなく、隣の扉から入って!」から始まり、テント場の説明もでしかめっ面で棒読み。
そんな嫌ならその仕事やめろや!って言いたくなるくらい。
不帰キレットに飲まれろ!って心の中で叫んでました(笑)

テント泊をあきらめる

いやー感じ悪かった。幕営料1000円を支払い、再びテント場へ。
しかし、ストックシェルターを組み立てるも、横風により吹き飛ばされる始末。
ストックシェルターは標準で2本のペグが付いており、それらは縦方向の2ヶ所用となっています。
横方向にもペグを打てるようになっていますが、2本だとそこはストックでだけで支える状態。
しかし、強風だとストックだけでは支えられず吹き飛ばされてしまいペシャンコに・・。
場所、方向をいろいろ変えて試行錯誤しましたが上手くいかず。
そうこうしいる内に体が冷えてきました。寒い・・。
ダメだ、今日は山荘泊にしよう!
別にTJARの参加条件を満たそうとしているわけじゃないし(^^;)

宿舎へ移動。
中に入り宿泊の受付へ。
宿泊&夕食セットにしました。
朝食はなし。朝食は5時からで、5時より先に出発している可能性も考えて。
夕食付8700円でした。
しかし、この宿舎、至る所に「テント泊者の入室禁止!」「テント泊者の利用禁止!」の文字があり、まるでテント泊者を差別するかのような雰囲気があります(^^;)


案内された部屋に到着。
・・・お布団だ!!
4日ぶりくらいでしょうかお布団は。ここまで夜行バスで1泊&ストックシェルター3泊でしたので。
ストックシェルター泊も快適でしたけどね(^^)

荷物整理などする。
あと「乾燥室」というのがあり、そこに濡れた衣服を吊るしておくことが出来ました。
そしてこの旅で唯一の忘れものは、この乾燥室に吊るしたトランクス一枚。
山荘の人、対処に困っているだろうなあ・・すんません(^^;)

その後、山岳相談所みたいな所があったので、明日のコースと天気を聞くことに。
そこでまず、栂海山荘と白鳥小屋が無人ということを知る。
補給出来ないのか・・・。
そして気になる天気。
これはやはり昼にかけて雨の可能性があるようで、最悪は稜線で雷。
次の営業小屋は朝日小屋となり、そこで場合によっては宿泊。料理も手作りで美味しいよとのアドバイスを頂く。
ふと、窓の外を見ると白いガスが流れるように動いている。・・風も強そうだな。
今日の八峰キレット、不帰キレット通過によりほぼ日本海到達を確信した気分になっていましたが、そう簡単にはいかないようです。
最後まで分からんなー・・。

夕食@頂上宿舎


17時、夕食の時間になりました。
食堂へ。
なんか売店もある!


なんとここの夕食はバイキング形式!!
好きなものを好きなだけ・・。


こんな感じです。
お布団に売店にバイキング。
朝からキレットなど頑張ってきたご褒美かな(^^)
しかし、これは山の上にいるという感覚を鈍らせてしまう怖さもあるなと、心の片隅で思っていたり。

すっかりお腹いっぱいになり寝室へ。
どうやら宿はガラガラなようで、案内された部屋は2段ベットが並ぶ8人?10人部屋でしたが、そこには自分を含めて2人だけ。
ラッキー♪
もう一人の人は寡黙ながっちりとした体格のいかにも山男って感じの人。
悪い人ではなさそう(^^)
が、夜にこの男によって苦しめられることになろうとは・・・。