2013八ヶ岳100マイル惨敗記⑤インタビュー
インタビュー編
──今回、八ヶ岳スーパートレイル100マイルに挑戦された「うさかめ選手にその大会の模様や結果について色々聞きたいと思います。うさかめ選手、まずは大会お疲れ様でした。
お疲れ様でした。
リタイアについて
──本大会、残念ながら115キロ地点でのリタイアという結果ですが、この点について原因などあれば教えてください。
はい。主な原因は30km~40kmで出始めた腸脛靭帯炎です。
最初の山、八子ヶ峰とその後のロードと30km過ぎまでは疲れも無くは順調に走っていたのですが、自然文化園~登山歴史館あたりで右腿の外側に張りを感じました。
また、右足の足首~親指にも張りを感じ、右足全体に違和感がある状態でした。
結局その張りが腸脛靭帯炎に繋がり、終盤走れなくなりました。
──なるほど。腸脛靭帯炎を確信した時点でリタイアは考えなかったのですか?
考えました。まだ40km。残り約120kmと考えると絶望的でした。
迷いましたが、まだその時は予定していた時間通りにレースを進めていましたし、100マイルという長い時間の中で回復に期待して歩を進めました。
あと、63km地点の清里まで行けばストックの使用が可能になり、96km地点の松原湖まで行けばデポに預けた保険の膝サポーターがあったので、それらに期待して進むことにしました。
──なるほど。確かに本レースでは第1関門の清里サンメドウズからストック使用可能となっていますね。
ストックについて
──ストックは普段から使われていたのですか?
はい。普段はブラックダイヤモンドのディスタンスというストックを使っています。
今回はレースのために更に軽いウルトラディスタンスを投入しました。
僕は膝を故障することが多いため、練習でもロングのときは積極的に使っています。
今回も左膝に膝蓋靭帯炎の不安を抱えた状態でした。
──なるほど。ストック、サポーターを使ってレース展開に変化はありましたか?
ええ。ストックはロードでも使えるように先端にカバーをつけていたのですが、清里を出た後は本当に楽になり、一度諦めかけた完走も少し見えました。
しかし、松原湖に着くころにはストックを使っても膝が痛く、様態は悪化していました。
松原湖で約40分休み、ストレッチをしてサポーターをつけましたが、状態は変わらず、得意の登りでもスピードが落ちてしまいました。
登りでも痛みが出たので、完走は厳しいと思いましたね。
──なるほど。終盤はストック、サポーター持ってしてもスピードが落ちてしまったということですね。
終盤のレース展開
──終盤のレース展開についてお聞きしたいのですが、終盤でのタイムはどのようなものでしたか?
はい。松原湖に到着したのが22時過ぎ。予定より約1時間押していました。
当初の予定ではそこから大河原峠までで9時間と考えていました。
23時に松原湖を出発し、予定通り行けば大河原には朝の8時。
大河原から17kmのロードを3時間で走れば第3関門にぎりぎり間に合うかもと考えました。
なのでNTTまでのタイムによってはまだ可能性はあると感じていました。
松原湖からはロードの長い登りが続きました。結局、100kmの看板が見えた時点で松原湖から約1時間30分かかっていました。
つまり4kmを1時間30分です。このペースでいけば間違いなくアウト。この先10km以上歩いてNTT受信所に行ってもリタイアできるか分からない。
100kmの看板の前で松原湖まで戻る(リタイア)か悩みました。
──なるほど。ペース的に見てこのまま行っても制限時間に引っかかるのはほぼ間違いなし、ならば安全にリタイアできる松原湖まで歩いて戻るということですね。
ええ。実際、登っている最中、歩いて戻っている選手もいましたし、リタイア選手を乗せたバスが何台か横を通過したりして、その度に迷いました。
面白い出会い
でもそんな中、面白い出会いがあったんです。
──面白い出会いですか?
ええ。100kmの看板で立ち止まっていると後ろから女性ランナーが追いついてきました。
聞くとその方はお腹がやられたらしく走れない状態だそうで、気持ちも折れ、同じくリタイアを迷っているとのことでした。
そしてその人がザックから紙を取り出したんです。
その紙にどうも見覚えがありました。各エイドと距離、そして標高、予想タイムなどが一覧として記されたものです。
実は僕はアウトドア系のホームページを作っているんですが、そこで紹介していた八ヶ岳対策のタイムテーブル表だったのです。
──それはすごい偶然ですね。うさぎとかめののんびりアウトドアライフですよね。私も見てますよ。面白いですよね。
ありがとうございます。
──ホームページを見て、その情報を印刷して持って走っている方と偶然100km地点で会ったということですね。
はい。本当に面白かったです。そして有り難かったです。こんな素人の僕が紹介した情報を印刷までして持ってきてくれているなんて。
──それは嬉しいことですね。
でも責任も感じました。僕の情報のせいでこの人は予定が狂い、リタイアを考えるまでの状態になっているんじゃないかと。
──難しいところですね。
結局、僕はほぼリタイアを考えていたのですが、その出会いに賭けてみたくなり、一緒にNTT受信所まで行こうと誘いました。
その方も自らリタイアというのは悔しいらしく、駄目もとで行こうということになりました。
──なるほど。それは面白いですね。そこからNTTまで一緒に行き、リタイアされたということですか?
はい。厳密にはその女性の方はNTTの数キロ手前で仲間の車に乗り、リタイアとなりました。
結局僕も115km地点、、NTT受信所でリタイアとなったのですが、一人だったら100kmでやめていたかもと思うと、本当にいい出会いでした。
──それはすばらしいですね。30km過ぎからの膝の故障からリタイアまで、長く辛いものだったと思いますが、本当にお疲れ様でした。
練習について
──さて、お疲れのところ申し訳ないのですが、八ヶ岳100マイルに向けた練習などについてお伺いしたいのですが。
はい。100マイルという長いレース。練習もロングが必要と考えていました。
自分の中で大きかったのは「熊野古道「奥多摩-雲取-甲武信ヶ岳縦走「鎌倉ロードでしょうか。
熊野古道は2日かけてトレイル&ロードを約70km、奥多摩-雲取-甲武信ヶ岳縦走は金曜の夜12時~日曜の昼くらいまで仮眠を挟んでの55kmほど。鎌倉はロード約40kmです。
あとは10週連続で週末山に行ってました。これは意識していたわけではなく、気づけばそうなっていました。高尾、陣場がメインでしたね。
──10週連続ですか。それだけ通えば山の人に覚えられたんじゃないですか?
そうですね(笑)実際、高尾~陣馬途中にある城山のおばちゃんには覚えられました。
あと、陣馬山のおっちゃん。今日は遅いじゃないの?なんて言われたり。
──すっかり庭ですね(笑)練習などで気をつけた点は何かありますか?
そうですね。やっぱり最低でも50km以上のロングはやりたいと考えていました。
でもロードのロング対策が弱かったと感じています。仲間内では東京から小田原までという人もいましたし。実際その人はUTMB完走しているわけで。
あとは日常生活では必ず道を譲る、ということを意識していました。
──道を譲るですか?
はい。東京って人が多いじゃないですか。それで中には構わずぶつかってくる人や、まっすぐ歩いて来る人いるんですよ。
──携帯を見ながら歩いている人も多いですよね。
はい。そんな場合には必ず自分が道を譲って、余分に歩くようにしていました。
本当に小さなことですが、自分が想定している距離よりもちょっとだけ歩くことになるんです。
ちょっと臭いですが、人に道を譲れば自分の成長に繋がるって思ってやってました。
──名言ですね(笑)
結局完走できていないので、何言っても格好悪いですが。
ギアについて
──それではギアについてお伺いしたいのですが、まだお時間大丈夫でしょうか?
ええ。まだスーパーあずさ号の出発まで時間があるので大丈夫ですよ。
──ありがとうございます。今回のレースで活躍したギア、良かった点などあれば教えてもらえますか?
はい。先ほども触れましたが、やはりストックの存在は大きかったです。
あと、先端にカバーをつけてロード仕様にしていたという点も良かったですね。
それからヘッドライト。1週間前に慌てて買ったものなのですが、これも良かったです。
──といいますと?
もともとヘッドライトは持っていたのですが、明るさが80ルーメンほどで、少し頼りなかったのです。
そこでハンドライトを併用しようと考えていたのですが、ストックの邪魔になると考えたので、更に明るい200ルーメンのヘッドライトを買いました。
これが正解で、ヘッドライトのみでもナイトトレイルを不自由なく進めることができました。
──なるほど。確か、GENTOSのヘッドライトでしたっけ?
ええ。そうです。AMAZONで2500円くらいのものでした。
今後について
──では最後に今回のレース結果を踏まえて、今後のレース展開などお教えいただけますでしょうか?
やはり100マイルはどっかしらの大会で完走したいです。現実的にはUTMFになるんですかね。
でもUTMFと八ヶ岳ってぜんぜん中身が違うと思います。八ヶ岳はほんとスピードが必要とされるレースだと改めて感じました。
なので八ヶ岳はいつかリベンジしたいですね。
あとは12月に開催される第1回ふれあいの道(高尾~桧原村)トレイル・チャレンジャーズレース2013ですね。
これは43kmほどのレースなので上位を目指したいですね。
──それは楽しみですね。応援しています。
──最後になりましたが、本日はレース後のお疲れの中、本当に長いお時間お付き合いいただきありがとうございました。
いえ。こちらこそ、色々話ができて楽しかったです。